木曜日の森元です 第12回


2019年6月14日金曜日

こんにちは。

わたしは「チコちゃん綿棒」を使っています。

綿棒を耳に用いるのはいかがなものかという声を聞くこともよくあるものの、それでもわたしはいまだに手放せなくて、チコちゃん綿棒をもっぱら愛用しています。

お風呂あがりの耳の中の水分をぬぐうときに欠かせません。
そういえば、耳の中の掃除という意識の方は欠けています。

いまはむかし、友だちのおめでたい宴会にお邪魔をしたときのことです。
その友だちの旧知で「チコちゃん」と呼ばれている女性も臨席されていました。
わたしの席はチコちゃんのうしろでしたから、わたしはチコちゃんのうしろ姿ばかりをただただ視界に入れていました。

チコちゃんは三十路あたりの細くて小柄な女性でした。
そして、頭がアフロヘアーでした。

<きゃしゃな体躯にボワっとでっかく丸い頭部が乗っかっているかっこうでしたから、先端の綿の部分が特に大きなこしらえの綿棒に見えたのです。
それからはわたしにとってはこれといって呼称の定まらなかったあの形状の綿棒が「チコちゃん綿棒」になりました。
ですから、これはわたしと家人だけの符牒です。

ドラッグストアーへ行っても、なかなか置いていないことがしょっちゅうです。
それで、店員さんへそのままうっかりとたずねてしまったことがあります。
「あのぉ、チコちゃん綿棒はありますか?」
「えっ? はぁ…… ちょっとお待ちくださいね」

店員さんはそう言い残してお店の奥へ行き、しばらくして戻って来られました。
「すみません。切らしているみたいです」

却って謝らなければならないのはわたしの方なのですが、しかし、わたしはさもがっかりとしたそぶりで、なおかつ、とはいえへいちゃらですよというふたつのようすをこの場面では表さなければならない立場もわきまえていますので、お得意のアルカイック スマイルを浮かべつつ、「それではまたこんど入れておいてくださいね」と穏やかに言い残しながらそそくさとずらかるのです。

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