木曜日の森元です 第10回


2019年6月3日月曜日

こんにちは。

わたしには自分の小学生のころのお財布の記憶が

ほぼありません。

そういえば、お財布などをきちんともっては

いなかったのでしょう。

まずはお金そのものをそもそももっては

おりませんでした。

学校にいるときにはもちろんすかんぴんですし、

帰宅後にふたたび飛び出して遊びに行くときにも

昭和型半ズボンのポケットの中はすっからかんでした。

外でおなかがへっていても、家の晩ごはんまで

がまんよりほかはありませんし、のどがかわけば

そのあたりの水道の蛇口をひねっておりました。

むかしは公園や道端やお店屋さんの角に水道の栓が

しょっちゅうあったのです。

とにかく、おなかがへるとやれ水を飲みます。

それで、きくしてぬれた手は昭和型半ズボンの

よこっちょや服のはしっこでぞんざいにぬぐって

すませておりました。

なにももたずにマルゴシで出歩いていて、

まるでへいちゃらでした。

いまではわたしは鞄をもって歩いています。

ハンカチも紙ももって歩いています。

腕時計ももって歩いています。

電話ももって歩いています。

財布ももって歩いています。

でも、ただもっているだけです。

戻る