木曜日の森元です 第9回


2019年5月24日

こんにちは。

わたしの左腕の肘の近くにちっちゃなホクロが
あるのですが、そこからひょろりんこと1本の毛が
生えております。

その周りのかぼそくてたよりない体毛たちとは
異なって、かの1本は色黒で太くてちょいと
ちぢれていて、凛と屹立しているのです。

数年前にたまたま発見したもので、以降は
特には過保護にしないものの、それでも
口をはさまぬ慈愛のまなざしでそっと
見つめ続けてまいりました。

自慢話のようでなんだか見っともないのですが、
その毛の寸法をものさしで測ってもらうという
さりげないおくゆかしさを装った屈折的で
まわりくどくてしちめんどうくさいアピールを
家人にいたしました。

胸をはって測ってもらった結果は13ミリでした。

家人はものさしを持ったままたいしておののくことも
なければ、また、毛ほどの表敬もないままで、わたしの
目の前に自身の左腕の肘を曲げて突き出してきました。

見ると、そこにはホクロこそはないものの、
場ちがいな1本の長い毛がひょろりんこと伸びておりました。

家人の手からものさしを鼻息も荒くもぎ取ったわたしが
測りましたら、そのエクセレントな毛の長さは20ミリでした。

家人はわたしの知らない間に知らない所へ毛を生やして、
こっそりとたいせつに育んでいたのです。

「エルボー モーかしらね!」

どうやら家人は謎の肘の毛を英語で命名豪語したようでした。

「モー」はただ「毛」の音読みになっているだけの
ようでしたが、たかだか13ミリぽっちのわたしごときに
いったいなにが言えたでしょうか。

それよりも、これからはお互いに肘に毛を持つ者どうしで
肩を寄せ合って浮世の片隅につましく暮らしてまいります。

それではまたこんど。

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